ストレスとは
ストレスとは

 ストレスという用語は、物理学の分野で使われていたもので、物体の外側からかけられた圧力によって歪みが生じた状態を言います。(1930年ハンスセリエストレスが学生を発表)ストレスを風船にたとえてみると、風船を指で押さえる力をストレッサーと言い、ストレッサーによって風船が歪んだ状態をストレス反応と言います。医学や心理学の領域では、こころや体にかかる外部からの刺激をストレッサーと言い、ストレッサーに適応しようとして、こころや体に生じたさまざまな反応をストレス反応と言います。
 私たちのこころや体に影響を及ぼすストレッサーには、「物理的ストレッサー」(暑さや寒さ、騒音や混雑など)、「化学的ストレッサー」(公害物質、薬物、酸素欠乏・過剰、一酸化炭素など)、「心理・社会的ストレッサー」(人間関係や仕事上の問題、家庭の問題など)があります。普段私たちが「ストレス」と言っているものの多くは、この「心理・社会的ストレッサー」のことを指しています。職場には仕事の量や質、対人関係をはじめ、さまざまな要因がストレッサーとなりうることが分かっています。
 ストレッサーによって引き起こされるストレス反応は、心理面、身体面、行動面の3つに分けることができます。心理面でのストレス反応には、活気の低下、イライラ、不安、抑うつ(気分の落ち込み,興味・関心の低下)などがあります。身体面でのストレス反応には、体のふしぶしの痛み頭痛、肩こり、腰痛、目の疲れ、動悸や息切れ、胃痛、食欲低下、便秘や下痢、不眠などさまざまな症状があります。また、行動面でのストレス反応には、飲酒量や喫煙量の増加、仕事でのミスや事故、ヒヤリハットの増加などがあります。
 これらのストレス反応が長く続く場合には、過剰なストレス状態に陥っているサインかもしれません。これらの症状に気づいたら、普段の生活を振り返り、ストレスと上手に付き合うための方法(コーピング)を工夫してみることをおすすめします。コーピングが上手く行われることで、ストレス反応を軽減することができます。また、これらの症状の程度が重く、長期間続くような場合には、専門家(精神科、心療内科)に相談してください。


ストレスの現状

 少子高齢化、団塊世代の大量退職、成果主義の導入、国際競争の激化、人員削減による負担の増大、経済状況の悪化など、近年、働く人びとを取り巻く環境は大きく変化しています。こうした変化に伴い、仕事でストレスを感じている労働者の割合や、ストレスの内容も変化してきました。
 厚生労働省が5年に1回行っている労働者健康状況調査によれば、「仕事や職業生活でストレスを感じている」労働者の割合は50.6%(1982年)、55.0%(1987年)、57.3%(1992年)、62.8%(1997年)、61.5%(2002年)、58.0%(2007年)と推移しており、今や働く人の約6割はストレスを感じながら仕事をしていると言えます。この割合を年代別に見てみると(2007年の調査結果)、55.4%(20歳代)、62.2%(30歳代)、63.1%(40歳代)、55.2%(50歳代)、37.1%(60歳以上)となっており、30歳代・40歳代のいわゆる働き盛り世代のストレスが高く、この傾向は男女ともに共通しています。
 ストレスの内容を具体的に見ると、人間関係(38.4%)が最も多く、仕事の質(34.8%)、仕事の量(30.6%)と続きます。これを男女別に見ると、男性では仕事の質(36.3%)が最も多く、人間関係(30.4%)、仕事の量(30.3%)と続くほか、会社の将来性(29.1%)や定年後の仕事・老後の問題(24.1%)についても3人から4人に1人の割合で不安を訴えていることが分かります。一方女性では、人間関係(50.5%)でストレスを自覚している人が約半数を占め、続いて仕事の質(32.5%)、仕事の量(31.1%)と続いています。


ライフサイクルとキャリア発達課題ストレス

 ストレスは、仕事生活におけるキャリアの発達課題と、ライフサイクルの重なりによっても起こります。ここでは、厚生労働省による労働者健康状況調査(2007年)を参考にしながら、ライフサイクルに伴う仕事のストレスいいかえるとキャリアの発達課題について考えてみます。
 大部分の労働者は、20歳代前半から30歳ごろにかけて職業生活を始めます。これらの時期では、新しい職場環境に慣れ、仕事を覚え、人間関係を構築することが必要で、こうしたキャリア発達課題に伴うストレスを自覚することが多くなります。また、仕事の適性に関する悩みが多いのもこの時期の特徴です。
 30歳代では、職場環境や人間関係にも慣れ、職業生活も軌道に乗る頃で、周囲からの期待もしだいに大きくなってきます。この時期には、キャリアの次の発達課題である後輩の育成やマネジメントが発生します。これに伴い、仕事の忙しさや量的な負担についてストレスを感じる労働者が多くなるのもこの時期の特徴です。また、私生活でも結婚や子どもの誕生といった大きな変化を経験し、こうした変化に対応することもストレッサーになることがあります。
 40歳代では周囲からの期待がさらに大きくなり、より高度な内容の仕事を求められるキャリア課題が発生します。管理職などの立場で部下や後輩の管理業務を任される機会も多くなることから、仕事の質についてストレスを感じる労働者の割合も増えてきます。このほかにも、上司と部下との間での「サンドイッチ現象」によって人間関係のストレスを感じる労働者も少なくありません。
 50歳代以降では、組織の中での能力や立場の差が顕著になってきます。会社や組織の中で中心的な役割を求められる労働者がいる一方で、そうでない労働者も出てくることから、人間関係で悩む人が少なくありません。また、定年後の仕事や老後の問題についても現実味を帯びてくるほか、自分自身の健康問題や両親の介護の問題などもストレッサーとなってきます。
 このようなライフイベントやキャリアの発達課題は、人が成長するために必要であり、越えるべき課題でもありますが、近年の社会環境の中では、一人で越えるハードルが高くなっています。


ストレスコーピング

心の健康を保つには、ストレスを排除することではなく、ストレスと上手に付き合い、上手くコーピング(対処)してくことです。コーピンが上手く行われていなければ、ストレス反応(精神・行動・身体面)が出ていますので、ストレス反応チェックを活用して、ストレスの仮説を立てることです。
職場のストレス対処の方法には、
<問題解決型>
1.問題点を明確にした
2.その問題についてさらに深く調べた
3.様々な解決方法を試した など
<社会的支援型>
1.知人、同僚に話した
2.上司に相談した
3.家族の協力を求めた
4.その件に関して専門家に意見を聴いた などが挙げられます。
<逃避・気晴らし型>
1.しばらく、問題から遠ざかっていた
2.旅行に出かけた
3.「重要なことではない」と自分に言いきかせた
4.趣味に没頭した など
<認知的再評価型>
1.直面している問題について良い点を挙げてみた
2.直面している問題について、第三者の見方を取り入れた など
<その他・リラクゼーションなど>
1.ストレスについての意識を高めた
2.自律訓練法をおこなった
3.呼吸法をおこなった など
列挙した中では、問題解決型が優れている場合が多いと言われています。しかし、常に問題解決型が最適なわけではありません。時には、アロマセラピーなど、リラクゼーションの方が優れている場合もあるでしょう。
※ストレス・コーピングにおいて重要なことは、自分自身のコーピング・スタイルを知ることです。
人はストレスにさらされると、それが合理的か否かを吟味する前に、いつも同一のコーピングを選択しがちだと言われています。自分自身の傾向を知ると共に、日ごろからより多くのコーピングの選択肢を持つように心がけてみましょう。

コーピングを行動に移すために

1. 問題となるストレスを自分なりに評価してみましょう。他者の意見も参考にする。
2. もしあの人だったら、ストレスにどう対応するか、
   自分と他者を置き換えて考えてみる。
3. 問題点を、より小さく、管理しやすい課題に細分化する。
4. 問題を解決するための、現実的な目標を具体的に設定する。
5. 可能な限り情報を集め、広範な選択肢を全部列挙してみる。
6. そのコーピングによって、社会に不利益や不公正をもたらすことがないか、
   吟味する。
7. 解決策を実行する様子をイメージしてみる。
8. 失敗することも想定して、解決策を実行に移す。
9. 失敗しても問題解決過程を再度やり直すために必要なフィードバックだと
   見なおす。
10.慣れないことは難しいと考えがちですが、いつもと違った行動する勇気も
   大切です。